UPDATE 2014/06/11
コラム
いきものばなし
護岸で固められた場所ほどやはりウナギは減っていた!
日本人にはなじみのウナギ。今、世界のウナギは非常に数を減らしてきていると言われています。なかでも天然のニホンウナギは、なかなか獲れなくなってきています。
今日は、ニホンウナギと、川や湖の護岸工事の関係について、ニュースをお届けします。
岸辺をコンクリートで固める護岸工事などをした割合が高い河川や湖沼ほど、ニホンウナギの漁獲量の減少が著しいことが分かってきました。
東京大学の板倉光さん、木村伸吾さんの研究では、1960年以降、調べた全ての漁場でウナギは減少の傾向があり、護岸率が高いほど減り方が激しことが明らかになりまいた。18の河川のうち、護岸率が61%と最も高かった熊本県の球磨川では、漁獲量の減少率が年14.7%と最も激しく、続く護岸率が45%の緑川(熊本県)は減少率も第2位(年11・7%)でした。反対に、護岸率が5%と最も低い四万十川(高知県)は、減少率が年1.3%と最低でした。
岸辺を護岸で固めて、自然の岸辺が失われたことによってウナギの隠れ場所や餌が減って、ウナギたちが暮らせる場が減ってきているのでしょう。
ウナギが住める川や湖を取り戻すことで、ニホンウナギが増えていく可能性はあるのです。ウナギを食べたいと思ったとき、そんな話を少し思い出してみてください。、
●板倉 光・木村伸吾(東京大学大学院 新領域創成科学研究科 大気海洋研究所)
岸辺をコンクリートで固める護岸工事などをした割合が高い河川や湖沼ほど、ニホンウナギの漁獲量の減少が著しいことが分かってきた。
意外なことに、護岸のような人間活動がウナギに与える影響について、これまで科学的な研究はほとんど行われていなかった。
私たちの研究グループでは、日本の主要なウナギ漁場であった18カ所の河川と9カ所の湖沼を対象とし、護岸工事などの改修工事で失われた自然の岸辺の割合(護岸率)とウナギの漁獲量の推移との関係性について、環境省の護岸率のデータと農林水産省の漁獲量のデータを使って解析を行った。
我が国のウナギ漁獲量は、1960年以降、解析した全ての漁場で減少傾向にあり、護岸率が高いほど減り方が激しかった。18河川中、護岸率が61%と最も高かった球磨川(熊本県)は漁獲量の減少率が年14.7%と最も激しく、続く護岸率が45%の緑川(熊本県)は減少率も第2位(年11・7%)。反対に、護岸率が5%と最も低い四万十川(高知県)は、減少率が年1.3%と最低だった。
湖沼でも、護岸率が97~98%と自然の岸辺がほとんどなくなった茨城県の北浦や霞ケ浦、千葉県の手賀沼では、ウナギ漁獲量が極めて低水準になった。逆に護岸率が54~57%と比較的低い琵琶湖(滋賀県)や小川原湖(青森県)では、漁獲量の減少の程度はわずかだった。霞ケ浦では、護岸率が10%程度であった70年代半ばでは、漁獲量が年200トン近くあったが、護岸率が上がるとともに漁獲量は急激に減った。護岸率が95%を超えた90年代にはウナギはほとんど捕れなくなった。
岸辺を護岸で固め、自然の岸辺が失われたことによってウナギの隠れ場所や餌が減り、生息環境が大幅に悪化したことが、漁獲量減少の大きな要因のひとつとなったと考えられる。水辺の自然環境を再生すれば、減少しているニホンウナギの資源の保全に繋がるかもしれない。