日本自然保護協会(NACS-J)が提供する、暮らしをワンランクアップさせる生物多様性の世界

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UPDATE 2014/03/26

特集

注目の新テクノロジーは日本人の自然観と技術力が肝!

生きものを手本に社会を変える“ネイチャー・テクノロジー”

高速・高い安全性で世界に注目される日本の新幹線。そこには空気抵抗を減らすためにカワセミのくちばしの形を参考にしたり、騒音を抑えるためにフクロウの羽のしくみを応用したり、生きもの体のしくみからヒントを得た技術があります。新幹線に限らず、服にくっつくオナモミからマジックテープ、水をはじくハスの葉の表面構造から雨具などの撥水製品と、生きものを真似て誕生した製品が実は私たちの身近なところにあふれています。

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カワセミのくちばしを参考にした「500系」新幹線。

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騒音解消のヒントはフクロウから。

自然界では何十億年という長い時間の中で、さまざまな生きものが環境に応じて多様に変化し、現在のカタチをつくりあげてきました。人間が抱えている問題を解決するヒントは、無数にある生きものたちのカタチに隠れているのです。
生きもののしくみから生まれた数々の技術、そして、生きものから学ぶモノづくりの第一人者、石田秀輝さんが考える、自然から学ぶライフスタイルをご紹介しましょう。

生きものの不思議から生まれたテクノロジー

身近なところで目にする生きもののしくみも、実はさまざまな技術に応用されています。その一部をご紹介します。

1)ヤモリの足から新型の接着テープ

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ヤモリ(写真:伊藤信男)

つるつるのガラスでも、でこぼこな岩でもすいすい登ることができるヤモリ。指一本で天井にくっついていられるほど強力な接着力を持っていますが、足の裏に吸盤はありません。ヤモリはいったいどのようなしくみでくっついているのでしょうか?

実は、ヤモリの足の裏には長さが30~130マイクロメートル、直径が人の髪の毛の10分の1程度という細かい毛がびっしりと生えています。その毛の数は一本の足に50万本。さらに、この毛の先端は100~1000本に枝分かれしています。この細かい毛があることで、「ファンデンワールス力」という分子と分子が引きあう力が強く発揮されるために、貼り付いているのです。

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↑→ヤモリの足の裏の拡大写真。極めて細い毛がびっしりと生えている。(写真:日東電工株式会社)

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このしくみを応用した技術が世界中で研究されています。日本では、日東電工株式会社が大阪大学と共同研究を進め、人工的に細かい毛が生えた構造をカーボンナノチューブ(CNT)で再現し、ヤモリに近い接着力を持った「CNTヤモリテープ」の開発に成功しました。カナダの研究チームは、壁などを垂直走行できる小型のキャタピラ付き車型ロボットの開発に成功しています。

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1㎝角のCNTヤモリテープで500gのペットボトルを支えることができる。(写真:日東電工株式会社)

 

2)フクロウの羽でパンタグラフの騒音解消

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鳥類の中では珍しく夜行性のフクロウ。森の中で獲物めがけて一気に地上へ舞い降りますが、この時大きな羽音が立ちません。
この静かなハンティングを可能にするのは羽根の先端の構造。
フクロウの翼の先の羽根の縁には小さな針のようなのこぎりの歯状の羽毛があり、それが空気の流れに小さな渦を生じさせることで音を解消しているのです。

このしくみに着目したのがJR西日本の新幹線開発チーム。時速300kmを超える新幹線の開発中、新幹線の屋根につけるパンタグラフから出る大きな騒音の解消が課題となっていました。フクロウの羽根のしくみを応用し、パンタグラフに小さな突起をつけたところ小さな渦が生じ、騒音を抑えることに成功したのです。同じ新幹線の先頭車両には、水や空気の抵抗を減らす、鋭い流線形のカワセミのくちばしの形状が応用されています。

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3)ガの複眼で無反射フィルム

スズメガ科シモフリスズメの眼(写真:伊藤信男)

スズメガ科シモフリスズメの眼(写真:伊藤信男)

ガのほとんどは夜行性。かすかな明かりしかない夜に飛び回って生活できる秘密は、眼の表面構造にありました。ガも、チョウと同じように六角形の小さな眼がたくさん集まってできる複眼をもっています。

ガはこの複眼の表面が、300ナノメートルという、ごく細かい突起がたくさん並んでいる凹凸構造(モスアイ構造)をしているのです。この突起があるために、光の屈折率を変化させ、取り込んだ光を反射させません。光を反射させないことで、外敵に見つかりにくくしたり、夜のわずかな光を目の奥まで届けています。

このしくみをヒントに、三菱レイヨン株式会社と財団法人神奈川科学技術アカデミーは、映り込みの少ない無反射フィルムを開発。テレビや携帯電話のディスプレイなどさまざまなものへの応用が期待されています。

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↑→新たに開発された無反射フィルムの表面拡大写真(左)と、フィルムの映り込みの違い(下)。(写真:三菱レイヨン株式会社)

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4)ホタルの光はケミカルライト

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ホタルは呼吸によって酸素を得ているので、その発光間隔は呼吸のリズムに合った発光となる。

夏の夜に美しく光るホタルの光。電気も火もないのに発光するホタルの光は、ホタル体内での化学反応による現象です。発光物質であるルシフェリンが、ルシフェラーゼという物質などと、気管から供給される酸素によって化学反応を起こして光ります。ホタルイカや夜光虫も、同じ化学反応による光。

このしくみを応用したのが、コンサート会場や縁日などで見かける、蛍光色に光るケミカルライトです。もともとは、宇宙でも安全に使える照明器具として開発が進められました。熱や火を出さないため室内でも安全に使えるほか、電源もいらず水にも強いため、アウトドアや非常用としても活用されています。

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5)魚の群れのようにぶつからない車

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数えきれないほどの魚が集まって群れになって泳ぎ、一斉に方向を変えていく光景を見たことがあるでしょう。魚たちは、どんなに集まってもぶつかることがありません。この魚たちの行動は、①離れたら近づく、②近づきすぎたら離れる、③中間の位置にあるときは同じ方向に向きをそろえるという3つの法則で成り立つと考えられています。

この魚群の法則を使って、集団でも衝突しないで自由に動き回れるシステムが開発されています。日産自動車では「ぶつからない車」の実現に向けて、集団で走行するロボットカー「EPORO」を試験的に開発しました。センサーや通信機能によってお互いの状況や周囲の環境を把握し3つの法則にのっとって走行することで、魚の群れのように自由に変形可能な群れをつくり、ぶつからずに移動することに成功しています。

 

6)アワビの殻から軽くて丈夫でさびない材料

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外はごつごつで、内側はキラキラしているアワビの殻。この殻は、陶器やレンガと同じセラミックスの仲間ですが、軽いのにとても硬くて丈夫。落としても、ハンマーでたたいてもなかなか割れません。

こんなに丈夫なアワビの殻の秘密はキラキラの内側にありました。殻の内側は、厚さが1マイクロメートル以下という極めて薄いセラミックスの板が、何層にも重なり、よく伸びる接着剤で貼り合わされた状態になっています。強い力がかかって薄い板が何枚か壊れても、次の板との貼り合わせ面でヒビの進行方向がずれたり、軟らかい接着層がヒビが進むエネルギーを吸収したりして、途中でヒビが止まり殻自体が割れることがありません。

現在、アワビと同じようにセラミックの板を何層にも重ね「軽くて、丈夫で、さびない」夢の材料をつくる研究が進められています。この材料が開発されれば、自動車やロケットといった製品をはじめ、人工骨といった医療分野まで、広く活用されるでしょう。また、陶器のように高温で焼き固める処理をしなくても硬いセラミックスをつくれるアワビに学べば、極めて効率良くセラミックスがつくれるようになるかもしれません。

夢のセラミックス開発に向け、NASAなどでも研究開発が進められているアワビの殻。キラキラした光沢は構造色の一種でもある。

 

7)タマムシの輝きに学んだ新しい着色方法

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角度によってさまざまな色を見せる、独特の光沢をもつタマムシ。このタマムシの美しい色は、実は色素によるものではありません。タマムシの外皮の表面は、厚さが100ナノメートルという極めて薄い層が重なった構造になっています。

この層を光が通るときに特殊な反射が起こり、美しい光沢を生んでいるのです。このような発色メカニズムを「構造色」といい、クジャクの羽や青く美しいモルフォチョウなど、自然界のさまざまなところで見ることができます。CDなどの虹色の輝きも同じしくみ。構造が崩れない限り、いつまでも色あせることがありません。

このタマムシの発色機構を利用して、ステンレスなどの金属をさまざまな色に発色させる技術が開発されています。色素を使わないため、溶かしてしまえば純粋な金属にもどりリサイクルが容易。塗料が溶ける心配もないので、口に入れても安全です。モルフォチョウについてもそのしくみを応用し、色あせない繊維などが開発されています。

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東京農業大学で開発された、構造色のしくみをつかって着色したステンレスのスプーン。(写真:長島孝行)

 

ライフスタイルまで考え直す自然に学んだテクノロジー

自然に学んだテクノロジーは、私たちが直面する地球環境問題の解決策となるのでしょうか。自然と共に豊かに暮らし続ける新しいライフスタイルを提案し、「自然のすごさ」に学ぶものづくりのトップランナーであり続けてきた石田秀輝さんに、お話を伺いました。

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石田秀輝(東北大学大学院環境科学研究科教授)
1953 年岡山県生まれ。伊奈製陶株式会社(後に㈱INAX)を経て、2004年より現職。工学博士。専門は地質鉱物学をベースとした材料化学。自然のすごさを賢く活かす新しいものづくり「ネイチャーテクノロジー」を提唱し、国内外で積極的に活動している。ネイチャーテック研究会代表、アースウォッチ・ジャパン理事ほか。

Q.自然に学ぶテクノロジーのアイデアはどのように生まれるのでしょう?

私は頭の中に、アイデアのもとになるような、これからのライフスタイルに必要な要素をたくさんストックするようにしています。分野を問わず広くアンテナを張り、これからのライフスタイルに活かせるものがないかいつも考えています。
例えば、いま日本人の生活用水160億トンのうち40億トンが洗浄のために使われています。清潔さは日本人の美徳のひとつかもしれませんが、ちょっと使いすぎですね。そこで省資源でキレイ・快適を保つ暮らし方のためにどうしたらいいのかを考えました。自然のドアをノックしてマネができそうなものを探したのです。最初に思い付いたのは、いつでもピカピカしているゴキブリなどの甲虫類でした。でも、これらは分泌液を出して表面をきれいにしているためなかなかマネができません。次に思いついたのがカタツムリでした。調べてみると、カタツムリの場合は分泌液ではなく、殻の構造によって常にきれいな状態を保っていたのです。これを応用すれば、少ない水で洗剤も使わずに清潔さを保つタイルなどがつくれそうだ……と。ちなみに、カタツムリなら何でもよいというわけではなく、私たちの研究では、日本産のマイマイをモデルにしました。このしくみは、外壁用タイルをはじめ、キッチンシンクやトイレの防汚技術に応用され、INAXの商品として販売されています。

今開発中のものには、日本文理大学の小幡章教授との共同研究で進めているトンボの翅の形状に学んだ小型風力発電機があります。各家庭で発電できるような発電機はこれからのライフスタイルにきっと必要になるでしょう。微風でも飛ぶことができるトンボのしくみに学べば、弱い風でも発電できる風力発電機ができるのではないかと考え、航空機の開発などを専門とする流体力学に詳しい小幡先生に相談。共同研究を進めると、トンボの翅の断面は凹凸の形状をしていて、そこに小さな渦ができることでトンボの揚力が支えられていることが分かりました。現在は、発電機の実用化に向けて研究を進めています。

Q.なぜ自然に学ぶものづくりをはじめたのですか?

きっかけは、企業に勤めていたころに、ものづくりと持続可能な社会を両立させるためには、どうすべきか悩んだことでした。持続可能性を考えると、循環型の社会を目指さなくてはなりません。循環システムについて勉強する中で、この地球は、地面の下から大気圏まで含めた大きな循環の中で、完璧に持続的な世界をつくっていることに気づきました。また、自然の中では、今の人間の技術では考えられないような小さなエネルギーでさまざまなことが行われています。自然は、「完璧な循環を最も小さなエネルギーで駆動させている」のです。この素晴らしいしくみで成り立つ自然に学び、デザインし直してテクノロジーとして取り入れることができれば、まったく新しいテクノロジーが生まれるのではないかと考えました。

そしてもうひとつ、現代テクノロジーは産業革命以降、自然と決別することで発展し、さまざまな問題を生み出してきたことに気づいたからです。人類は地下資源を使い、自然界にないものすらつくりだし、思いがけない問題を引き起こしてきました。この地下資源型のテクノロジーを全否定するわけではありません。しかし、本当に必要なものは何なのか、今改めて考え直してもいいのではないかと。そして、地下資源に頼らない、自然と共存する新しいテクノロジーの出番が来るのではないかと思ったためです。今の環境問題を踏まえてものづくりを考えるためには、自然に学ぶ姿勢が避けて通れませんでした。

▲新しいテクノロジーへのアプローチは2つの道がある。

 

Q.テクノロジーが変われば循環型の持続可能な社会につながるのでしょうか?

自然に学び小さなエネルギーで駆動する商品をつくっても、「エコだからいくらでも使っていい」という考えでは、消費量が拡大し、いつまでたっても持続可能な社会にはつながりません。実際日本では、あらゆる商品がエコ化し、エネルギー性能は格段に上がったにもかかわらず、家庭部門の環境負荷は増加が続いています。私はこれを「エコ・ジレンマ」と呼んでいますが、これを解消し、次世代へと豊かな暮らしを伝えていくためには、ライフスタイルそのものを変えていく必要があります。

しかし、私たちはこれまでに獲得してきた「豊かな暮らし」を捨てることはできません。新たなライスタイルを考えるには、暮らしの中の「豊かさ」の意味を今一度考える必要がありました。そこで、2004年から社会調査を行い、20代から60代の男女を対象に暮らしに何を求めるのかを尋ねたところ、回答の上位は「利便性(22%)」、「自然(20%)」、「楽しさ(19%)」となり、「利便性」と「自然」が同程度に求められていることが分かったのです。ここでいう「自然」は、大自然の中で過ごすようなものだけを指すのではなく、日常の中でふれあう身近な自然や、自然からもたらされる恵み、生活に活かされている自然素材なども含まれていると考えています。

真の循環型社会を目指すこれからの暮らしには、人と地球両方のことを考え、心豊かに暮らせるようなライフルタイルが必要なのです。そのライフスタイルに向けて、単に自然や生物を模倣するだけでなく、自然の完璧な循環をお手本に、暮らしまで変えていくような新しいテクノロジーを、私は「ネイチャー・テクノロジー」と呼んでいます。

 

Q.新たなライフスタイルをつくるために、大切なものはなんでしょうか?

人と地球、両方のことを考えながら、自然をお手本にライフスタイルをデザインしていくために重要なのは「自然観」だと考えています。地下資源に支えられた近代テクノロジーは、「自然は人間より下にあり、人間はそれを自由に使うことができる」という自然支配を基盤としたヨーロッパの考えのもとに発展してきました。
しかし、日本人にとって、自然は下になどはありません。古くから、自然を畏れ、敬い、神の宿るものとして崇めながら、自然と寄り添い共存してきました。この日本人が持つ「自然観」をテクノロジーに移し変えたものが、ネイチャー・テクノロジーなのです。ライフルタイルまで含めた自然に学ぶデザインというのは、高い自然観と技術力を持つ日本人だからこそできる分野だと思います。

現代社会はさまざまな問題を抱えています。2030年ごろには、エネルギーや資源の価格は高騰し、今ほどふんだんに使うことはできなくなるでしょう。しかし、そんな厳しい制約下でも、ネイチャー・テクノロジーのシステムを使えば、豊かに楽しく暮らす方法を考えることができます。例えば、小さな発電用の風車が各家庭の軒下で回り、醤油や砂糖のように蓄えた電気をお隣に借りに行ったり、エアコンなしでも快適な家になっていたり、省スペースでお手軽・簡単な家庭菜園ができるようになれば、新鮮で安心安全な食材が手に入り、冷蔵庫も小さくていい……、そんな素敵なライフスタイルを描くことができるのです。

東日本大震災を経て、私たちは変わっていけると確信しました。高い自然観を持った日本人が、この新しい一歩を踏み出し、世界に発信していく義務を負っているのです。

 

らしていくための、テクノロジーとライフスタイルの創出が求められている。

▲自然に学んだテクノロジーの創出システム。人と地球の両方のことを考え、心豊かに暮らしていくための、テクノロジーとライフスタイルの創出が求められている。

取材・まとめ/増沢有葉(日本自然保護協会)

 

石田秀輝さんが研究・開発に携わった自然に学んだテクノロジー

カタツムリの殻で汚れないタイル

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雨の季節によく見かけるカタツムリ。じめじめした場所にいるのに、殻はいつもキレイです。これは一体なぜなのでしょう。

殻の表面構造の解析を進めていくと、数百ナノメートルという、とてつもなく細かい溝が殻表面に広がり、常にその溝に水がたまるしくみになっていることが分かりました。水がたまっている殻に油をたらすと、水と油は反発し合う性質なので弾かれて、流れ落ちるときに汚れも一緒に落ちていくのです。この技術を応用して、いつでもキレイな外壁タイルや、シンクやトイレの材料がつくられています。

▲カタツムリの殻の電子顕微鏡写真。この細かい溝によって水膜ができ、油や汚れを寄せ付けない。

▲カタツムリの殻の電子顕微鏡写真。この細かい溝によって水膜ができ、油や汚れを寄せ付けない。

 

土のすき間を活かしたタイルでエアコンいらず!

電気を使わなくてもいつでも快適な温度を保つ部屋……、それを実現したのは土でした。土には、4~8ナノメートルほどの小さなすき間があります。土を使い、このすき間がある構造を取り入れた材料で家の壁や床をつくると、小さなすき間が、湿度の高いときは湿気を吸い取り、低いときは吐き出すことで、快適な湿度を保ってくれるのです。

また、土をつくる粘土鉱物そのものにも数ナノメートルの穴があるものがあり、これを最大限利用することで化学物質などの臭いを吸収することが可能です。伝統的な土蔵もこのしくみを利用しています。この土のタイルも商品化され、暮らしの中に取り入れられています。

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土の粒子の間のすき間を残したままで固めることに成功した。

 

 

滑空名人トンボに学んだ小型風力発電機

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最近、再生可能エネルギーとして期待が高まる風力発電。しかしこれまでのものは、風車が強風に耐えられえない、微風では回らずに発電できないといった技術的な問題点がありました。

そこで着目したのはトンボ。強風時でも無風状態でも飛べるトンボの翅は、航空機の翼とは違い薄板を凹凸に折り曲げたようなものです。この構造を詳しく調べてみると、凹凸が小さな渦を生み出し、外側の空気を速やかに流すことで安定した飛翔を可能にしていることが分かりました。この技術を風車に応用して実験したところ、微風でも回り、台風にも耐え、かつおおむね一定回転を維持できる風車を、なんとケント紙1枚でつくることができました。強風・微風時にも回るだけでなく、小型で安全、軽量、安価と、従来製品の多くの弱点を克服しています。「トンボ風車」が各家庭の軒先で回る日も遠くないかもしれません。

風速20cm/秒というそよ風より弱い風でも回る小型風力発電機

風速20cm/秒というそよ風より弱い風でも回る小型風力発電機

 

▼トンボの翅の形状の金型を使った実験。

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1.凸凹翼の周囲にはきれいな流れができている。

2.凹凸によって翅の周りに小さな渦の列が発生し、全体の揚力を確保している。

2.凹凸によって翅の周りに小さな渦の列が発生し、全体の揚力を確保している。

3.翅の周囲にできている渦の外周を結ぶと、飛行機の翼の形になっている。

3.翅の周囲にできている渦の外周を結ぶと、飛行機の翼の形になっている。

 

 

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