日本自然保護協会(NACS-J)が提供する、暮らしをワンランクアップさせる生物多様性の世界

しぜんもん

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UPDATE 2014/05/28

観察

今日からはじめる自然観察

チョウの幼虫が好きな葉は?

チョウに出合いたい。
そう思ったとき、花壇や花畑に足を運ぶのが、普通かもしれません。
それも、もちろん有効ですが、特定のチョウに出合いたいときは、
そのチョウの幼虫が食べる植物を見つけてみましょう。

偏食家の幼虫

チョウの幼虫が食べる植物を、食草あるいは食樹といいます。幼虫は、食べる植物の種類が決まっていて、成虫はその植物に産卵します。ですから、その植物を見つければ、目当てのチョウと出合う可能性が高くなります。仮に、成虫がいなくても、卵や幼虫、蛹に出合えるでしょう。

身近なアゲハチョウの仲間を例に挙げてみます。アゲハとキアゲハは一見するとよく似ています。しかし、アゲハの幼虫が食べるのは、ミカンなどかんきつ類の植物が主です。キアゲハの幼虫はニンジンなどセリ科の植物を食べます。もしも、アゲハの幼虫にニンジンの葉を与え続けたら、餓死してしまいます。

食草や食樹は、どのように探せばいいでしょうか。まずは、その植物が生えていそうな場所を探すのがいいでしょう。アゲハを例に挙げれば、ミカン畑ですが、身近に畑がなければ人家や公園の垣根を探します。食草のひとつであるミカン科のカラタチが植栽されていることが多いためです。アオスジアゲハであれば神社です。境内などに幼虫の食草であるクスノキが植えられていることが多いからです。

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▲幼虫がスミレを食べるチョウには、ヒョウモンチョウの仲間が多い。若齢のころは葉の外側をかじっているが、終齢近くになると茎にまで及ぶ。ツマグロヒョウモンの幼虫(写真A、B)は、スミレの仲間のパンジーなどの園芸種も食べる。ヒョウモンチョウの仲間は年に一回しか発生しないが、ツマグロヒョウモンは例外的に年に何度も世代交代をする多化性。オスはヒョウモンチョウらしい姿で、後翅が黒く縁取られる。メスは前翅の先端が黒紫色で、“ツマグロ”の名前の由来となっている。

 

逆転の発想で、チョウを呼ぶことも可能です。筆者の知人は都心のマンションに住んでいますが、ある日、サルトリイバラをベランダに置きました。すると、どこからともなくルリタテハ(山地に多い)が飛んできたのです。サルトリイバラはルリタテハの食草です。知人は意図して呼ぼうとしたわけではなかったのですが、チョウが食草や食樹をかぎつける能力のすごさを、図らずも示した例と言えるでしょう。

ところで、チョウの種ごとに食草や食樹があるのはなぜでしょうか。植物が毒成分をつくり、チョウがそれを食べられるようになる長い進化の歴史を反映するものと考えられています。中には、ジャコウアゲハのように、幼虫時代にウマノスズクサ(河川敷に多い)を食べて毒成分を体内に蓄積し、鳥など天敵から身を守る種も存在します。

一方、食草や食樹とは違いますが、チョウによっては、吸蜜源として好みの花が存在します。アオスジアゲハのヤブガラシ(荒れ地に多いつる状植物)、”渡り蝶”アサギマダラのヒヨドリバナ(林道沿いに多い)、黒いアゲハチョウの仲間のツツジ類などが知られています。

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宮沢 輝夫(読売新聞東京本社地方部昆虫に詳しい自然派記者)

写真:A: 池沢隆一/ B,C,F,G,J,O,P: 伏島 済/D,H,I,L: 大屋厚夫/ E,M,Q: 伊藤信男/ K,N: 有田忠弘


 

※いくつかの写真にあるマークの「自然しらべ」とは、日本自然保護協会主催の大人から子どもまで誰もが参加できる自然環境調査です。チョウについては2011年7・8月に全国の皆さんと一緒にしらべてみました。(調査結果はこちらでご覧いただけます。)

また、今年2014年の「自然しらべ」では、「赤トンボ」の調査をします! 始まり次第お知らせしますので、ぜひ皆さんもご参加ください♪

 

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