日本自然保護協会(NACS-J)が提供する、暮らしをワンランクアップさせる生物多様性の世界

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UPDATE 2015/03/04

特集

原発事故から4年、福島の現状

東日本大震災による福島第一原発事故から4年が経とうとしています。
福島県自然保護協会は、自然環境や野生生物の放射能汚染状況を調べてきました。

福島県自然保護協会事務局の横田清美さんからの報告です。

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国や県の調査だけでは足りない

私は福島県郡山市に住んでいます。市内にある五百淵公園の池のそばに、放射線量を表示するリアルタイム線量測定システムが立っています。2015年2月9日現在、毎時約0.3マイクロシーベルトを表示していますが、公園の林の中に入って自分の測定器で測ると0.6マイクロシーベルト以上あり、2マイクロシーベルト超のホットスポット(局地的に放射線量が高いところ)もあります。そこには危険を知らせるものは何もなく、人々が普通にウォーキングなどをしています。国や県の調査だけでは、自分たちの身近な自然の汚染状況を十分に把握することはできません。そこで、私たちは自然公園などの放射線量や、土壌・木灰・野鳥の巣材などの放射能濃度を独自に調べてきました。

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南湖公園(白河市)の除染現場。表土が剥ぎ取られ、袋に詰められていた。ここはミヤマタムラソウ(県の希少種)やヤマユリが生育する場所だった。

2012年には、当会はテレビ局の番組制作にかかわり、約半年間、川やため池の底泥に含まれるセシウム濃度を放射能測定の専門家と一緒に調べることができました。調べた結果のうち、国が測定した場所と同じだった地点の数値を比較したところ、表1のように、国の数値があまりにも低いことに気づきました。測定結果に大きな差があるので、環境省に詳細な測定方法を問い合わせましたが、答えてはもらえませんでした。

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※両結果ともに、セシウム濃度はCs137とCs134の合算。
※三春ダムについては、3カ所で調べて最も多い値を記載したが、3カ所とも1万Bq/kgを超えていた。ほかは1カ所のみで計測。測定方法や少しの場所の違いで数値に差が出ることはあるが、あまりにも差が大きい。

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測定器が空いていても食品以外は検査できない

野生生物への影響については、より多くの種を調べるべきだと思いますが、県は食用になる鳥獣と魚しか調べていません。私たちは大学などに測定を依頼して、交通事故などで死亡した野生哺乳類21体(表2参照)、鳥類、爬虫類、両生類、昆虫さまざまな生物の放射能濃度を調べてきました。しかし、協力してくださる大学などの先生方はみな忙しく、最近は測定が滞っている状況です。

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※セシウム濃度はCs(セシウム)137とCs134の合算。
ND=検出限界値以下。
一般食品の基準値は100ベクレル/kg。

 

県内の公民館などには500台以上の放射能濃度測定器が設置されています。無料で検査してくれますが、規定により測れるのは食品と飲み水だけです。研究目的であってもそのほかのものは測ってくれません。住民が心配している田畑の土も薪ストーブなどの灰も測ってくれません。最近は食品を検査に出す人が少なくなりました。わが町の測定所は何度見に行っても開店休業状態です。ぜひ、食品以外のものも測定できるようにしてほしいと思います。また、国や県は空いている測定器を活用して野生生物などの測定を積極的に行うべきだと思います。

 

さまざまな課題

当会では、ほかにも多くの放射線に関連する問題に向き合っています。
福島市では汚染土壌の仮置き場が国立公園のすぐそばに計画されています。そこは猛禽類の巣やトウホクサンショウウオの産卵が確認されている保安林で、農業用水の水源地でもあります。県協会は、福島市長に対し自然環境に配慮した仮置き場の選定を求める要望書を提出しました。
自然観察会で使用していた公園は、除染のため、カタクリ群生地の表土が削り取られ、野鳥や昆虫の姿が少なくなりました。
自然農法で自給自足の暮らしをしている二本松市に住む県協会の会員のSさんは、自宅で使用していた薪ストーブの灰から最大で1㎏あたり14万ベクレルの放射性セシウムが検出されました(表3)。薪は自宅の裏山で採ったものでした。自然農法の作物も今は放射能濃度を測定しながら、基準を超えないものしか食べることができません。原発事故の影響は、自然と共生した暮らしを願う人にほど大きくのしかかっているようです。

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※セシウム濃度はCs137とCs134の合算。

県協会では、これらの問題と向き合い活動を続けています。これまでの調査結果や活動内容は、県協会のウェブサイトに掲載しています。今後も独自調査を続けるため、より正確な空間線量を測る放射線測定器(サーベイメータ)を購入したいと考えています。この購入費用と調査活動へのご寄付にご協力をお願いいたします。また、放射能濃度を測る測定器をお持ちで調査に協力していただける方がいらっしゃいましたら、ご連絡をお待ちしています。

福島県自然保護協会のウェブサイト:http://sizenhogo.sakura.ne.jp/hogo/
【問い合わせ】 Eメール:yokota.nature@eagle.ocn.ne.jp ※スパムメール対策のため@を大文字にしています。小文字に修正して送信してください。

【ご 寄 付】 郵便振替:口座番号02240-9-117735(名義:福島県自然保護協会)※通信欄に「寄付」と記載してください。

会報『自然保護』2015年3・4月号より転載)

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