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しぜんもん


UPDATE 2014/08/22

おすすめ書籍

保育者と教師のための動物介在教育入門

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谷田 創・木場有紀
岩波書店 2014年1月29日刊 2700円+税

 

書名からもわかるように、保育者と教師のために書かれた動物介在教育の入門書である。そう言われるとひとまず関係ないものとしてしまいそうであるが、読んでみるとなかなか面白い。保育者や教師ではない自分のためになる本である。

動物介在教育とは動物を教育の場に介在させた、つまり動物の助けを借りた教育全般のことを指すようだ。なんと明治時代からつづく日本の教育の場の伝統芸でもある。しかしそれはあまり体系的でもなく、試行錯誤でなされてきたようである。
動物介在療法のアニマル・セラピーとは異なり、他者との心の交流回路を開放することで、他者との関係性を向上させようとする、つまりは「情の種子」を蒔いて育てる「慈悲の心を持って行動できる人間」を育てることに主眼をおいた教育である。

カタイ本であることを覚悟すれば、やわらかい部分が面白いし、やがてカタイ部分も面白く見えてくる。幼稚園で飼育していたハムスターが死んでしまったときに、園児が生き返ってくるように祈ったり、また買ってくればいいと思ったり、死をどのように受け入れるか、飼育していた生きものが死亡した際の園児の対応で、全国の幼稚園のアンケートで一緒に墓をつくって埋めるのが最も多いのは、私的な興味ではあるが、墓好きな日本人がこの年代から育てられていることが良くわかる。

後半は、動物介在教育を導入するための教育技術書とも言える部分である。生きものを飼育するということは、それがペット動物か園の飼育動物かということと関係なく、かなりに時間と労力をともなう。教育も動物飼育も共通して、何かを育むには、あせることなく、ゆっくりと時間と労力をかけることが必須条件である、というところが子育てに通じる教育書として読めるものである。
そういえば、子や孫が通う保育園と小学校でも、何か動物を飼っていたようだ。と思うと読まずにはいられない。サッパリとした読後感がある。

自分世代の子どものころにくらべて、身の回りから生きものがいなくなっている現代において、書かれたことに意義があるものといえよう。

 

推薦者:亀山章(日本自然保護協会 理事長)  ★プロフィールは>>>こちら ★

<日刊ゲンダイ(2014年3月6日)掲載記事>


 

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