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UPDATE 2014/08/20

連載

子育てと自然

第2回 Q.子どもの運動能力を高めるためにはスポーツクラブに入れたほうがいい?(後編)

Q. 小学生の子どもがいます。周りのお子さんがスポーツクラブや塾などで毎日忙しくしている様子をみると、遊ばせてばかりいては運動や勉強に遅れをとってしまうのではないか心配です。

★前編(遊びは脳や身体の発達の土台づくりの基本・・・)の記事は>>>こちら

 

遊びは社会性を育む

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自然の中で子どもはおもちゃに代わる棒きれや石ころを見つけては遊具としてうまく利用しながら遊んでいます。
海辺で海草の固まりを見つけるとボール打ちの真似をしたり、それを見つけて興味をもった小さい子どもが黙ってとりあげたりすると、大きい子どもが小さい子どもに順番にやろうと持ちかけたりしています。こうした遊びを通して子どもは社会性を獲得していくのです。さらに子どもは群れて遊ぶプロセスを通して自分たちでルールを決めて遊びに工夫をこらし、小さな社会をつくって遊んでいるといえます。

国立青少年教育振興機構の調査によりますと、現代の子どもは夜空いっぱいに輝く星をゆっくり見る、太陽が昇る・沈むところを見たことがない、海や川で泳いだことがない、チョウやトンボ等昆虫を捕まえたことがないと指摘されています。
自然の不思議さや大きさを感覚的にとられていくことも子どもの育ちには必要です。北欧やドイツで活発に取り組まれている「森の幼稚園」では毎日、自然の様子が変化する森の中で過ごしています。そうした幼稚園で過ごしている子どもは人工的な保育環境で育てられている子どもより、健康で、運動神経が発達していて集中力が育まれていると言われています(*2)。

遊ぶ時間こそ意欲的な心を育む

現代の子どもは塾や習い事などで忙しく、親が子どもの生活時間を管理しがちで、遊び時間を生み出すことが難しくなってきています。
「遊び」は「まねる」ことから始まります。大人のやっていることを、他の子どもがやっていることをまねながら、またみんなと遊ぶことで「快楽」のホルモンを分泌して楽しくなり、自分で工夫していく能力を獲得します。それは「意欲の醸成」につながるのです。
ある高校の先生の話では、現代の子どもはTVのコマーシャルとコマーシャルの間の15分くらいしか集中できないといいます。子どもの生活をすべて管理するのではなく、幼児期から集中してものごとを進める時間を少しずつ増やしていき、かつ、意欲をもつ子どもには好きなことを集中してさせるようにします。
もちろん遊んで、食べて、排泄し、よく眠ること。そうすれば集中力も増していきます。子どもの時間は全てつながっているので、細切れにならないよう親も共に遊び、楽しむ姿勢をもつことが不可欠です。

「遊びは子どもの権利」と国連子どもの権利委員会では述べています。子どもは遊び、休息し、余暇を楽しむことにより、自己の豊かな創造性のある生活世界を拓いていく能力を獲得できるのです。その「遊び」の効用を認め、子どもの自己実現を支援していくのが大人の役割と考えます。

 

*2:岡部翠「幼児のための環境教育-スウェーデンからの贈りもの『森のムッレ教室』新評論

 

回答者:小澤紀美子

東京学芸大学名誉教授。専門は環境教育学。子どもたちの意欲や探究心を引き出しながら展開する「環境教育」を教育関係者に広めている。

 

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