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UPDATE 2015/12/24

NEWS

ハナノキの自生地がリニア工事の残土処分予定地に。

岐阜県可児郡御嵩町(かにぐんみたけちょう)は、春に赤い花を咲かせるハナノキの分布の西の端にあたる。私たちは、8年前から御嵩町内のハナノキ分布調査に取り組んできたが、2014年8月、町内最大のハナノキ自生地が、リニア中央新幹線(2027年東京ー名古屋間開通予定)のトンネル工事で発生する残土の処分場予定地であることが判明した。

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ハナノキ:3~4月頃に赤い花を咲かせる。

ハナノキは、高さ20m以上になるカエデの仲間で、環境省の絶滅危惧Ⅱ類である。古い時代の生き残りで、現在は岐阜県東濃地方を中心に、長野・愛知の限られた地域にのみ分布し、成木の数は2000本余りといわれている。

調査は、2007年から2015年にかけて、花や実のある3~6月と紅葉の秋に、地図を片手に御嵩町の谷筋をひとつひとつ踏査し、個体ごとの位置、サイズ、雌雄などを記録した。

その結果、2007年から2015年までに、胸高周囲15㎝以上の成木240本、15㎝未満の幼木119本、高さ120㎝以下の稚樹526本を確認した。次世代を担う幼木と稚樹群の発見は大きな収穫であったが、成木74本、幼木8本、稚樹432本を有する美佐野地域の中に、リニア残土処分場予定地がある。稚樹の8割以上が集中する最大の自生地だ。

また、予定地はハナノキと同じく、東海地方の固有種であるシデコブシ、ミカワバイケイソウ、クロミノニシゴリをはじめ、カザグルマ、ミズギボウシなどが生育する湿地帯でもある。湿地帯の中央を流れる沢には、タゴガエルやアカハライモリが生息し、周辺では長年にわたりサシバの営巣が観察されているほか、ミゾゴイの生息地でもある。残土処分場とするにはあまりにも惜しい自然環境ではないだろうか。

現在、JRによる環境アセスメントが進行中だが、この2016年度中に発表されるという結果を見守りたい。

(篭橋まゆみ/御嵩町ハナノキ調査グループ)

会報『自然保護』2016年1・2月号より転載

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